エイベックス60年の歩み/AVEX記念誌

AVEX記念誌
加藤精機時代、創業社長の一明のポリシーは「いいものをお客様に提供すれば、仕事は来る」だった。
明彦は言う。「その職人的な考え方は間違っていない。しかし、当時の我が社には、その技術力をアピールできる営業力がなかったんです」。

加藤精機は「忙しい会社」だった。これ以上は仕事を回せなく、外注を探すこともあった。しかし、と明彦は言う。「それでも利益は上がらなかったんです」。
自ずと、自己資本比率も低かった。お客様に交渉し、製造単価を上げてもらったこともあった。
どこに原因があったのか。「それは結局、営業力の弱さから利益率の高い仕事を取れず、単価の低い仕事ばかり請け負っていたからです」

どうすればそんな状況を打破できるか。方針転換が必要だーー。
明彦は思いを巡らせ、結論した。「後追いではダメだ。精密加工メーカーとしての、得意分野を持つ必要がある」。
得意分野を特化することで、設備投資が集約できる。また「専門メーカーとしてのイメージが向上すれば、営業活動が分かりやすくなる」ということだった。
加藤精機の場合、中心的な設備は6軸自動旋盤だ。「6軸をベースに、特化できる製品を探したところ、スプールバルブに白羽の矢が立ったんです」

長期的な視野に立って、利益率の悪い仕事はすべて思い切って精算。スプールバルブに特化することで、生産性が上がり、結果的にはコスト競争にも打ち克つことができた。「一時的にしろ、売上げは落ちる。しかし、その決断を下したからこそ、現在のエイベックスの基盤が出来上がったんです」と、明彦は言う。