エイベックス60年の歩み/AVEX記念誌

AVEX記念誌
社員の意識変革をもたらしたのは、1992年の社名変更によるところが大きい。

明彦は言う。「加藤精機時代は、いわば機関車のようなもの。動力は先頭の機関車(経営者)だけで、後は客車(社員)でした」。
しかし、もう時代が変わった。「これからは車両の1つひとつに動力があり、お互いが協力し合って、大きなパワーを生み出す時代です」。つまり、社員一人ひとりが主役ということだ。

「社員一人ひとりが主役」。その意識を共有するために、あえて社名から「加藤」の名を外し、新社名のもと出発することが決定された。

エイベックスという社名には当時働いていた社員のアイデアがたくさん込められており、当時エイベックスで働いていた社員から新社名を募集したところ、700以上の社名候補が上がった。その中から30社名に絞込み、厳選なる話し合いの結果、エイベックスという社名を獲得したのである。
先進性があり、なおかつ切削・研磨をイメージさせることを念頭に置いた。その結果として「エイベックス」が選ばれた。

もっとも、古参の社員の中には、長年慣れ親しんだ「加藤精機」の社名に愛着を持ち「寂しくなる」と言う者も少なくなかった。そのため、加藤精機という社名自体は、今も社屋の看板には残されている。「創業者の精神を忘れない、と言う意味合いもあります」と、明彦は言う。

社名変更と並行して、経営理念の構築にも力を入れた。「会社としては創業の精神がある。社是・社訓はそのまま活かして経営理念とし、それを踏まえて企業理念をまとめたんです」

社名変更、新工場の建設と、ドラスティックな変革が、この年で一気に推進された。
明彦はユーモアまじりに言う。「私も創業者になったつもりで、会社を変えました。第二創業期です。ですから私は、自分のことを『1.5代目』と自称しているんです」